1年ちょっと前でしょうか、情熱大陸というテレビ番組でとあるパリのレストランシェフの特集をやっていました。
Passage53という名前のフランス料理店で、パリ2区にある小さなアーケードの中にお店がありました。住所がまさにPassage53だとか。
シェフは日本人で、パリの日本人シェフとして初めてミシュラン2つ星をとった佐藤伸一氏。
とても小さなお店の中には彼のこだわりが一杯で、テレビに映るその料理を見て、ぜひとも訪ねてみたいと思っていました。
その時はまさか自分が翌年からパリに住むことになるとは思ってもみなかったのですが。
その番組の中で最も印象的だったシーンは、お客さんが料理を残した際に、その皿を裏で見た彼が涙を流していたこと。
何で残したんだろう、何がダメだったんだろう、と言って彼は非常に悔しそうに泣いていました。
仕事で泣くことはプロとして宜しくない、というのが一般的な意見かと思いますが、私は本気で全身全霊を込めて仕事していたら、勝った時も負けた時も泣かずにはいられないと思ってしまいます。
彼の気持ちが痛いほど分かったので、この店に来る前からファンになってしまいました。
さて、パリに来て早々、つたないフランス語と英語を交えて電話で3週間先の予約を行い、前日に確認の電話も入れた上で迎えた今日。
お店のあるPassage des Panoramasは、とっても小さな商店街で、レストランや雑貨屋がぎっしり。
1799年から始まった、パリ最古のアーケードだそうです。
お店はとてもシンプルな外装で、住所をみていないと通り過ぎてしまいそうでした。
たった22席の小さなお店ですが、給仕係が3名と、シェフ&見習いの方が6-7名いらっしゃいました。
給仕係はおそらくみなさんフランス人で、フランス語と英語が堪能です。
料理を作っている方は全員日本人とのことで、2階のキッチンで精力的に創作されていました。
メニューは1種類のコースのみ。さらに、本日のスペシャルとしてキャビアの前菜を単品注文しました。
秋の食材、ボルチーニ茸のコンソメスープからスタート。
追加注文したキャビアとチーズとニョッキの前菜。ワインが進みます。
かぶと海老。ソースは昆布出汁のジュレ。日本らしさが隠れています。
こちらが彼のスペシャリテ、カリフラワーとイカのお料理。同じ色の食材は相性が良いそうです。初めて食べる味。
ボルチーニ茸とお魚(名前を聞き忘れました)。秋らしく、きのこや栗をトッピング。
スイートオニオンをキャラメリゼし、なんと中にはイベリコ豚。
チキンと野菜。野菜はもはや何だかわかりませんでした。大根のような、リンゴのような、それともフランス独自の野菜なのか。
タイ料理で使うようなスパイスの香りがしました。
全くクセのない食べやすいラム肉。グレープフルーツとりんごと生姜のソースで。
白ぶどうのシャーベットとムース。フランスらしい。
甘党にはたまらない、デザート三種セット。
洋梨とお米のデザート、クリームブリュレ、チョコタルトです。
アメリカンとマドレーヌ。
写真から分かるように、品数が多いのでかなりお腹いっぱいになりました。
どのお料理もサプライズがあって楽しく頂くことができました。
そしてどれも忘れられないようなユニークな味、同時にとても優しい味。
季節ごとに訪ねようと強く心に決めました。
給仕の方に聞いたら、この店の良いところは世界中からお客さんが来ることだとおっしゃっていました。
フランスや日本はもちろんのこと、香港やアメリカ、オーストラリアなど、本当に様々な国のお客さんが来て、時には誰もフランス語を話さないこともあると。
ミシュランの星の効果なのか、それとも彼の料理を食べた人々の口コミが世界中に広まっているのか、何れにせよ日本人としては本当に嬉しいことですね。